【ダイハツ タント】客観的データに基づく総合評価

タントはこんなユーザーにおすすめ

  • 【スーパーや病院など、狭い駐車場を日常的に利用するシニア層や運転初心者】:ペダル踏み間違い時加速抑制装置が満点(2.0/2点)であり、前進・後進ともに障害物(車両)や歩行者を検知して急発進を強力に防いでくれます。
  • 【夜間の塾通いや通勤など、暗い時間帯の運転が多いドライバー】:対歩行者(夜間)の被害軽減ブレーキが53.8/55点と非常に高く、街灯のない暗い道でも高機能前照灯と連動して歩行者を高精度に検知・衝突回避します。
  • 【高速道路での長距離移動よりも、生活圏内での街乗りをメインとするユーザー】:対車両の被害軽減ブレーキが満点(33.0/33点)である一方、64km/hのオフセット前面衝突時に後席の乗員保護スコアが低下する(8.02/12点)など、中低速域での使用環境にこそ強みを発揮します。

JNCAPの厳しいテストからわかるタントの「強み」

日本の交通環境を想定した厳格なJNCAPテストにおいて、タントの「予防安全性能」は89%(ランクA)という極めて優れた結果を残しています。特に特筆すべきは、交差点や生活道路での事故を未然に防ぐ「被害軽減ブレーキ」の精度の高さです。対車両のテストでは33点満点を獲得し、時速60kmまでの幅広い速度域で衝突を完全に回避できることが実証されました。前方の車両に対して確実に反応し、追突事故のリスクを大幅に低減する能力は、渋滞時や市街地のストップ&ゴーが多い日本の道路事情において非常に頼もしい性能と言えます。

また、日本のインフラ環境(街灯の少なさや見通しの悪い狭い道)で重要となる夜間の対歩行者ブレーキテストでも、55点中53.8点(レベル5)という驚異的なスコアを記録しています。街灯のない暗闇のシナリオであっても、時速50km前後まで衝突を回避、または被害を大幅に軽減する能力が確認されています。これは、5.0点満点を獲得した高機能前照灯(オートマチックハイビーム等)との相乗効果によるものであり、夜間の歩行者飛び出しに対する安全性が極めて高い水準で担保されていることを示しています。

さらに、日本国内で社会問題化している「ペダル踏み間違い」への対策も万全です。前進・後進ともに障害物(車両)だけでなく、歩行者に対する加速抑制テストでも満点(2.0/2点)を獲得しています。駐車場等の狭いスペースにおけるアクセルとブレーキの踏み間違いによる重大事故を、超音波センサーやステレオカメラを用いたシステムが強力にバックアップして防いでくれる点は、一般道を中心とした日本の日常使いにおいて非常に心強い強みです。これに加えて、車線逸脱抑制装置も16点満点(レベル5)を獲得しており、ドライバーの一瞬の不注意による車線逸脱をしっかりとサポートし、元の車線に引き戻す機能が完璧に機能することが実証されています。

自動車安全性能2023試験映像:ダイハツ タント

出典:ナスバ((独)自動車事故対策機構)

購入前に知っておくべきタントの「注意点と弱点」

予防安全で高いスコアを誇る一方で、客観的なデータから読み取れる明確な弱点や注意点も存在します。
第一に、衝突安全性能(総合80%、ランクB)における「特定の部位へのダメージと救出性」です。時速64kmで行われたオフセット前面衝突テストにおいて、後席乗員(ダミー人形)の胸部傷害値が大きくなり、後席保護性能のスコアが12点中8.02点(レベル3)にとどまっています。資料の特記事項には「衝突の影響により、後席ダミーのシートベルトが肩から上腕部付近に移動したことで、胸部傷害値が大きくなったおそれがある」と明記されており、万が一の重大な前面衝突時には、後席の乗員の胸部に大きな負荷がかかるリスクがあることを理解しておく必要があります。また、時速55kmのフルラップ前面衝突テストでは、運転席の下肢部(右下脛骨荷重指数など)への負荷が指摘されており、運転席の評価が12点中8.16点(レベル3)となっています。さらに、衝突後にアウターハンドル(外側のドアノブ)でドアのラッチが解除できず、インナーハンドルで救出を行ったという事実も記録されています。

第二に、近年自転車事故が増加する日本において重要視される「対自転車」の被害軽減ブレーキの評価が著しく低い点です。このテストでは9点満点中わずか1.0点(レベル1)にとどまっており、特に見通しの悪い場所からの自転車の横断に対する検知・回避シナリオにおいて、システムが全く作動しない、あるいは十分な速度低減ができないという結果が示されています。日常的に自転車の多いエリアを走行する際は、システムに頼らずドライバー自身の目視による確実な安全確認が求められます。

最後に、「事故自動緊急通報装置」が装備されていない(0/8点)ため、万が一の重大事故発生時に自動でオペレーターに通報され、迅速な救命活動に繋げるシステムを求めるユーザーは、この点が満たされていないことに注意が必要です。

編集長の視点:タント

軽スーパーハイトワゴンという激戦区にあって、タントの予防安全性能はホンダ・N-BOXやスズキ・スペーシアといった強豪と比べても、日常の市街地走行におけるリスク回避能力においてトップクラスの水準にある。ダイハツが採用するステレオカメラ方式の予防安全機能「スマートアシスト」は、左右のカメラによる三角測量の原理で対象物との距離や形状を立体的に捉える能力に長けている。これが、対車両や夜間歩行者テスト、さらにはペダル踏み間違い時加速抑制における極めて高いスコアへと直結しているわけだ。高速クルージングの快適性よりも、歩行者や障害物が入り乱れ、ストップ&ゴーが連続する日本の生活道路でのアクティブセーフティを最優先する――そんなメーカーの明確な設計思想が感じられる。

その一方で、対自転車の被害軽減ブレーキ評価が著しく低い結果となった背景には、採用されているセンサーシステムの構造的な特性があるようだ。近年のライバル車が広角単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせて側方からの対象物検知能力を強化しているのに対し、タントのステレオカメラ主体のシステムには視野角にどうしても一定の制約がある。そのため、見通しの悪い交差点などでカメラの画角外から相対的に速い速度で飛び出してくる自転車の初期捕捉が遅れがちになり、現行の画像認識アルゴリズムではシステム作動条件を満たしきれなかった――これが低評価の要因と考えられる。

さらに、衝突安全性能における後席乗員の胸部傷害値の増大や、衝突後のアウターハンドルによるドアラッチ解除の不具合といった弱点についても、タント最大の特徴である「ミラクルオープンドア(助手席側Bピラー内蔵ドア)」という独自のボディ構造が影を落としている可能性が高い。広大な開口部と乗降の利便性を確保するため、ボディサイドには特殊な荷重伝達経路が設けられている。そのぶん、オフセット前面衝突のような非対称かつ局所的な強い衝撃が加わった際には、キャビン全体の変形モードが一般的なピラー構造の車両とは異なる挙動を示すと考えられる。そこで生じたキャビン周辺の微小な歪みが、ダミー人形へのシートベルトの拘束軌道のズレや、ドアラッチ機構の噛み込みを誘発した――というのが、テストデータと骨格構造から導き出させると思う。


ダイハツ タントのJNCAP テスト結果データ

日本基準(NASVA / JNCAP)

総合評価★★★★★ 81% (159.63 / 197点)
衝突安全性能Bランク 80%  (80.37点 / 100点)
予防安全性能Aランク 89%  (79.26点 / 89点)
テスト実施年度自動車安全性能2023年度(※衝突安全性能は2019年度の同一車種の試験結果を使用)

🔗JNCAP公式評価ページ(詳細ページ)はこちら

※注:本車種は日本国内専用モデルのため、Euro NCAP(欧州)やIIHS(米国)などの海外機関での衝突試験は実施されていません。
※注:評価データおよび考察はNCAP試験当時のものです。安全装備の性能は随時アップデートされるため、最新情報は必ずメーカー公式サイトにてご確認ください。

メーカー公式ページ

https://www.daihatsu.co.jp/lineup/tanto