【スズキ スペーシア】客観的データに基づく総合評価

スペーシアはこんなユーザーにおすすめ

  • 【夜間の塾帰りや習い事の送迎を担う親世代】:対歩行者の被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)が、街灯のない暗い夜道のテストにおいても満点(Level 5/5)を記録しています。夕暮れ時や夜間に、予測不能な歩行者の飛び出しリスクが高い環境を日常的に走るドライバーの強力なアシストとなります。
  • 【見通しの悪い生活道路や住宅街をメインに走るユーザー】:JNCAP特有の厳しい「対自転車」の被害軽減ブレーキテストにおいて最高評価を獲得。自転車が入り乱れる狭い交差点や、住宅街の路地裏など、低中速域での接触事故リスクに常に直面している環境でその真価を発揮します。
  • 【高齢の家族と同乗する、あるいは高齢者の運転見守りが必要なご家庭】:万が一の衝突時にエアバッグと連動してオペレーターへ自動接続し、迅速な救命活動をサポートする「事故自動緊急通報装置(先進型)」を満点(8/8点)で装備しているため、事後対応の確実性を担保したいケースに適しています。

JNCAPの厳しいテストからわかるスペーシアの「強み」

日本の交通インフラと実際の事故実態に即して行われるJNCAPのテストにおいて、スズキ・スペーシアは予防安全性能で驚異的な96%(ランクA・85.82/89点)を獲得しています。数ある試験のなかでも特筆すべき最大の強みは、被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の極めて高い精度です。単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせたセンサーにより、主要な対象物に対して軒並み最高評価の満点(Level 5/5)を記録しています。

まず、被害軽減ブレーキ(対車両)では33.0点満点を獲得。時速10kmの低速域から時速60kmの幹線道路の巡航速度まで、あらゆるシナリオで前走車との衝突を完全に回避できることが証明されています。
次に、日本の一般道で死亡・重傷事故の要因となりやすい対自転車への被害軽減ブレーキ
においても、9.0点満点を記録しています。車両の陰から急激に飛び出してくる自転車や、道路脇を並走する自転車に対してもシステムが素早くかつ正確に機能し、ドライバーの死角や認知遅れを補ってくれます。

さらに高く評価すべきポイントは、歩行者に対する夜間の検知能力です。「対歩行者(昼間)」での25.0点満点に加え、「対歩行者(夜間)」のテスト項目においても55.0点満点を叩き出しました。街灯のある明るい夜道だけでなく、街灯のない完全な暗闇のシナリオでも、時速60kmでの走行時から見事に歩行者を検知して衝突を回避しています。日本の生活道路は道幅が狭く、夜間は特に歩行者の発見が遅れがちですが、この極めて優秀な夜間センサー精度は日常の運転に絶大な安心感をもたらします。
加えて、車線逸脱を未然に防ぐ抑制装置(LDP/LDWS)も16.0点満点で作動。事故を「未然に防ぐ」予防安全の総合力においては、クラス最高峰の能力を持っていると断言できます。動でオペレーターに繋がる「事故自動緊急通報装置」が満点(100%)を獲得している点も、大きな安心材料です。

自動車安全性能2023試験映像:スズキ スペーシア

出典:ナスバ((独)自動車事故対策機構)

購入前に知っておくべきスペーシアの「注意点と弱点」

予防安全性能がほぼ完璧な数値を示した一方で、万が一衝突してしまった際の「衝突安全性能」においては、全体の75%(75.93/100点)にとどまり、最高評価のAランクではなくBランクという評価に甘んじました。事故を回避する能力には長けていますが、実際に衝突してしまった際の「乗員保護性能」には、データが明確に指し示す無視できない弱点が存在します。

最大の懸念点は、前面からの強い衝撃を受けた際の「運転席および後席乗員の胸部へのダメージ」です。時速64kmで運転席側の一部をバリアにぶつける「オフセット前面衝突試験」において、運転席のダミー人形の胸部変位量(胸がどれだけ強く圧迫されたかを示す数値)が34.36mmに達し、この項目の評価スコアが0.00点(ゼロ)という非常に厳しい結果となっています。さらに、助手席側の後席(2列目)に座る乗員ダミーにおいても、胸部変位量が47.07mmと非常に大きく、こちらも同様に0.00点を記録しました。
また、時速55kmで壁に真正面から激突する
「フルラップ前面衝突試験」においても、運転席の胸部スコアは0.88点と低迷。さらに、同じテストで頸部(首)への引張荷重によるスコア低下(0.92点)も記録されています。これらの事実は、シートベルト等による拘束装置の衝撃吸収能力(フォースリミッター等の働き)が十分ではなく、万が一の重大事故の際に、乗員の胸や首に致命的な負担がかかりやすい構造特性を持っていることを意味します。

その他の予防安全システムに関する注意点として、「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」が満点(2点)ではなく1.4点にとどまっている点も挙がります。前進時の踏み間違いに対しては良好に作動(1.0点)しますが、後進(バック)時においては速度変化率のスコアを落とし、0.4点にとどまりました。バック駐車時の踏み間違いに対するシステム介入には限界があるため、過信は禁物です。また、高機能前照灯は対向車を幻惑させない「自動防眩型」ではなく、単純なハイ/ロー切り替え式の「自動切替型」にとどまるため、1.4/5点という評価になっています。

編集長の視点:スペーシア

スズキ・スペーシアの安全性能を客観的に評価しようとするなら、同クラスのスーパーハイトワゴンである「ホンダ N-BOX」や「日産 ルークス」との比較は避けて通れない。結論から言ってしまうと、本モデルの「予防安全性能」は軽自動車という規格の枠を超えて、業界トップクラスの領域に達している。ただし、万が一の事故における「衝突安全性能」まで含めた総合的なバランスとなると、ライバル車に対して明確なビハインドを背負っているのも事実だ。N-BOXやルークスが厳しい衝突安全テストでも最高評価(ファイブスター賞やAランク)に相当する乗員保護性能を見せているのに対し、スペーシアはBランクにとどまり、特定のテスト項目では0点を記録している。この差は、各メーカーの設計思想の違いがそのまま数字に表れたものと見ていいだろう。

この衝突安全テスト、とりわけ前面オフセット衝突やフルラップ衝突における乗員の胸部・頸部ダメージスコアが振るわない背景には、スズキのクルマ作りが「軽量化」と「室内空間の最大化」を極限まで追い求めてきた設計思想が見え隠れする。スペーシアは軽量高剛性プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」をベースに、優れた燃費性能とパッケージングを実現した一台だ。しかしスーパーハイトワゴン特有の極端に短いフロントノーズでは、衝突エネルギーを吸収するための「クラッシャブルゾーン」を物理的に確保するのがそもそも難しい。競合他社が独自のフレームワークやレイアウトで荷重分散を最適化しているのに対し、スペーシアは徹底した軽量化と引き換えに、シートベルトのフォースリミッター(乗員の胸への圧迫を防ぐためにベルトを少し引き出す機構)のチューニングやキャビン変形の抑制において、限られたストローク内で乗員への衝撃荷重を逃がしきれていない――そんな構造的な限界が、数値データから浮かび上がってくる。

その一方で、この物理的なウィークポイントを「事故そのものを絶対に起こさせない」というアプローチでカバーしようとする姿勢こそが、驚異的な予防安全スコアの正体だと言える。最新の単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせたセンサーフュージョンは、夜間の歩行者検知を含め、ソフトウェアの解析精度とハードウェアのレスポンスの両面で競合を凌駕する結果を叩き出した。

つまりスペーシアの安全技術とは、物理的なボディ構造による乗員保護の余力を多少削ってでも、日常の利便性(広さ)と経済性(燃費)を最優先し、それに伴う衝突時のリスクは最先端の電子制御デバイスで徹底的に未然に防ぐ――そんな、きわめて合理的かつ潔い割り切りの上に成り立っている一台だと結論づけられる。


スズキ スペーシアのJNCAP テスト結果データ

日本基準(NASVA / JNCAP)

総合評価★★★★☆ 86% (169.75 / 197点)
衝突安全性能Bランク 75%  (75.93点 / 100点)
予防安全性能Aランク 96%  (85.82点 / 89点)
テスト実施年度2023年度

🔗JNCAP公式評価ページ(詳細ページ)はこちら

※注:本車種は日本国内専用モデルのため、Euro NCAP(欧州)やIIHS(米国)などの海外機関での衝突試験は実施されていません。
※注:評価データおよび考察はNCAP試験当時のものです。安全装備の性能は随時アップデートされるため、最新情報は必ずメーカー公式サイトにてご確認ください。

メーカー公式ページ

https://www.suzuki.co.jp/car/spacia