【三菱 デリカD:5】客観的データに基づく総合評価

三菱 デリカD:5のJNCAP安全性能データを総合的に分析します。本モデルは1,780kg(試験時重量は最大1,989kg)という重量を持つ8人乗りの4WDミニバンであり、その車格に見合った物理的な堅牢性がデータから明確に読み取れます。
なお、日本のJNCAP評価で近年重視されている「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」や「自転車の飛び出し対応」といった最新の予防安全機能について、本資料の試験車両においてはスコアの記載がなく、「衝突被害軽減ブレーキ」の項目も明確に「無」と記載されています。そのため、電子制御による事故の「未然防止」ではなく、万が一の衝突時に乗員をいかに守り抜くかという「物理的な衝突安全性能」および基礎的な「ブレーキ制動能力」を中心に、日本の交通環境における本車両の強みと弱みを解説していきます。

デリカD:5はこんなユーザーにおすすめ

  • 【雨天時や海沿いなどの滑りやすい路面を頻繁に走行するユーザー】:1.7トン超の重量級ボディでありながら、湿潤路面でのブレーキ性能試験において車線からの「はみ出し無」を維持し、45.6mで安定して停止できる制動能力と、横すべり防止装置が標準装備されている事実が裏付けとなっています。
  • 【交差点の多い市街地よりも、幹線道路をメインに長距離移動するユーザー】:最新の衝突被害軽減ブレーキ等の予防安全機能が未装備である一方、フルラップおよびオフセット前面衝突(特に運転席)で93%以上の極めて高い得点率を獲得しており、前方からの強い衝撃に対する堅牢な車体剛性が実証されています。
  • 【助手席側に小柄な家族などを乗せることが少なく、運転席メインで利用するドライバー】:ダミー人形の計測データ上、助手席のフルラップ前面衝突試験の評価が運転席に比べて一段階低く、胸部への負荷も大きいことが示されているため、単独での運転や、より安全性の高い座席位置を活用する運用に適しています。

JNCAPの厳しいテストからわかるデリカD:5の「強み」

本車両の最大の強みは、前面および側面からの物理的な衝突に対する基本骨格の頑強さです。まず、運転席の保護性能の高さが挙げられます。正面から壁に激突する「フルラップ前面衝突試験」において、運転席は得点率93.2%(レベル5)、車体の片側をぶつける「オフセット前面衝突試験」においても94.7%(レベル5)という極めて高い評価を獲得しています。オフセット衝突は、対向車とすれ違いざまに車体の一部同士がぶつかるような、日本の狭い道路事情で起こりやすい事故形態を模しています。この試験において、運転席の頭部傷害値(HIC)は266.0と非常に低く抑えられており、ステアリングの変形や後方・上方への移動量も最小限に留められています。これは、運転者の頭部や胸部、下肢部への致命的なダメージを防ぐ生存空間がしっかりと確保されていることを証明しています。

さらに特筆すべきは、側面衝突試験の結果です。資料には「当該車両は運転席と助手席の乗車位置に差異があるため、条件が不利と思われる助手席側において側面衝突試験を実施しました」との注記があります。あえて条件の厳しい側でテストを行ったにもかかわらず、頭部・胸部・腹部・恥骨への保護性能は得点率100.0%(12.00点満点・レベル5)を記録しました。見通しの悪い交差点での出合い頭の衝突などにおいて、乗員を側方からの衝撃から守るキャビン剛性の高さは、多人数を乗せるミニバンとして非常に強力な事実です。

また、車両重量1,780kg(試験時フルラップで1,988kg)という重量級ボディでありながら、基礎的なブレーキ性能試験において乾燥路面で42.8m、滑りやすい湿潤路面でも45.6mで停止し、いずれも車線からの「はみ出し無」を記録しています。ABSや横すべり防止装置が標準装備されていることと相まって、雨天時の高速道路などでも姿勢を崩さずに安全に減速できる基礎的な運動性能の高さが確認できます。

購入前に知っておくべきデリカD:5の「注意点と弱点」

高い運転席のスコアとは対照的に、購入前に理解しておくべき明確な注意点もデータから浮かび上がります。

第一に、助手席の保護性能が運転席に比べて劣るという事実です。フルラップ前面衝突試験において、助手席の得点率は82.0%(レベル4)に留まっています。ダミー人形のデータを細かく確認すると、フルラップ衝突時の助手席の頭部傷害値(HIC)は577.2と、運転席(340.6)よりも高く、合成加速度も49.98 G(運転席は42.92 G)と強い衝撃が計測されています。また、オフセット前面衝突試験における助手席の胸部変位は31.41mm(運転席22.48mm)に達しています。これは、助手席の乗員が衝突時に受ける胸部への圧迫や衝撃が運転席よりも大きいことを示しており、日常的に助手席に家族を乗せる機会が多いユーザーは留意すべきポイントです。

第二に、現代の基準から見た安全装備の不足です。本車両には運転席・助手席のフロントエアバッグは装備されていますが、「サイドエアバッグ」および「サイドカーテンエアバッグ」は「無」となっています。側面衝突試験のスコア自体は満点ですが、実際の多様な事故環境において、窓ガラスの飛散や電柱などとの局所的な衝突から乗員の頭部を直接守るカーテンエアバッグがないことは、事実として認識しておく必要があります。さらに、前述の通り「衝突被害軽減ブレーキ」が装備されていないため、危険回避はすべてドライバー自身の認知と操作に委ねられています。

第三に、対歩行者への保護性能です。「歩行者頭部保護性能」の評価はレベル3(総合得点2.67点)に留まっています。資料の分布図を見ると、ボンネットの左右端やフロントガラスの付け根付近において硬い部位が存在することがわかります。万が一、市街地などで歩行者と接触した場合、歩行者の頭部に与えるダメージを吸収しきれないリスクがあることを示しています。住宅街などの狭い生活道路を走行する際は、自動ブレーキに頼れないことと合わせ、より一層の慎重な徐行運転が求められます。

衝突安全/予防安全 試験映像へのリンク

https://www.nasva.go.jp/mamoru/assessment_car/detail/131#result_list03

編集長の視点:デリカD:3

JNCAPの試験データから見えてくるデリカD:5の安全性能は、同クラスのミニバンであるトヨタ・アルファードや日産・エルグランドなどと並べてみると、かなり特異な立ち位置にあると言っていい。一般的な多人数乗車のミニバンは、広い室内空間と大型スライドドアを成立させるためにボディの開口部が大きくなりがちで、側面衝突やオフセット衝突でキャビンが変形しないよう剛性を確保することが、構造上の大きな課題になる。ところが本モデルは、条件の厳しい助手席側での側面衝突試験で満点を記録し、オフセット衝突でも高い得点率を叩き出している。これは、同じ車格のミニバンの中でも、物理的な堅牢さという点でトップクラスの水準にあることを、データがそのまま示していると言える。

このキャビン保護性能の突出ぶりは、三菱独自の設計思想である「リブボーンフレーム」構造によるところが大きいと見ていい。哺乳類の肋骨(あばら骨)のように、ピラー(柱)からルーフにかけて環状の強固な骨格を連続して配置することで、ミニバンにありがちな大開口部という弱点を、構造そのもので克服しているわけだ。悪路走破を前提としたクロスカントリーSUVとしてのタフさを、箱型のパッケージに落とし込むというメーカーの設計思想が、結果として交差点での側面衝突や対向車とのオフセット衝突の場面で、乗員の生存空間を守り切る強固なセーフティケージとして機能している。

一方で、歩行者保護性能が伸び悩んでいることや、助手席側との数値差についても、車体構造から説明がつく。SUVらしいスクエアで高いノーズの形状は、歩行者と接触した際に頭部が硬いボンネット端やフロントガラスの付け根に当たりやすく、乗用車のような低いノーズを持つ車に比べて、衝撃を吸収するためのストロークを稼ぎにくい。また助手席のスコアが運転席より劣る要因としては、エンジンルーム内の重量物(エンジンブロックやトランスミッションなど)が左右非対称に配置されていることや、ダッシュボード内部の空調ユニットのレイアウトによって、左右でクラッシュストローク(潰れしろ)や衝撃の伝わり方に差が出ていることが考えられる。

総じて言えば、このデータから浮かび上がるデリカD:5の本質は、今どきの高度な電子制御による「予防安全」に頼るのではなく、車体骨格そのものの物理的な強さで乗員を守り抜くという「衝突安全」の思想が色濃く出ている構造だということだ。最新の運転支援デバイスを積んでいない点は事実として押さえておく必要があるが、万が一物理的な衝突が起きたときに、ベースとなる骨格がどれほど高い乗員保護能力を持っているかは、これらのテストスコアがはっきりと物語っている。
※本コラムは2007年度JNCAP資料を元に書かれています。

三菱 デリカD:5のJNCAP テスト結果データ

日本基準(NASVA / JNCAP)

総合評価運転席★★★★★★ / 助手席★★★★★★
衝突安全性能運転席 34.54点 (得点率 95.9%) / 助手席 21.84点 (得点率 91.0%)
予防安全性能未実施
テスト実施年度2007年度

🔗JNCAP公式評価ページ(詳細ページ)はこちら

※注:本車種は日本市場を主力とするモデルのため、Euro NCAP(欧州)やIIHS(米国)などの海外機関での衝突試験は実施されていません。
※注:評価データおよび考察はNCAP試験当時のものです。安全装備の性能は随時アップデートされるため、最新情報は必ずメーカー公式サイトにてご確認ください。

メーカー公式ページ

https://www.mitsubishi-motors.co.jp/lineup/delica_d5