【日産 サクラ】客観的データに基づく総合評価
サクラはこんなユーザーにおすすめ
- 【夜間に学習塾や駅への送迎を行うドライバー】:対歩行者の被害軽減ブレーキ試験において、夜間(街灯あり・なし両条件)のテストで55.0点満点を獲得しており、暗い生活道路での歩行者飛び出しに対する高い検知能力がデータとして裏付けられています。
- 【狭い駐車場での切り返しを頻繁に行うユーザー】:ペダル踏み間違い時加速抑制装置で2.0点満点を獲得していることに加え、後方視界情報提供装置(近接・近傍・遠方の全エリア)でも満点評価を受けており、システムによる確実なバックアップが担保されています。
- 【事故時の二次被害や救命の遅れを危惧する単独運転が多い人】:EV特有の懸念である衝突後の感電保護性能が「適合」判定を受けているほか、満点評価の事故自動緊急通報装置(先進型)を装備しており、万が一の際の迅速な救護要請が可能なシステムが構築されています。
JNCAPの厳しいテストからわかるサクラの「強み」
日産 サクラは、JNCAP(自動車安全性能2022)において、総合得点184.92点(199点満点、92%)を獲得し、最高評価である「ファイブスター賞(五つ星)」に輝きました。
特に「予防安全性能」においては、91点満点中88.62点(97%)という極めて高いスコアを叩き出し、日本の交通環境で発生しやすい事故を想定したテストで優秀な成績を残しています。
最大の強みは、日本の市街地で多発する追突や接触を防ぐ被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の圧倒的な性能です。対車両のテストでは33.0点満点、対歩行者(昼間)のテストでも25.0点満点(ともにLevel 5/5)を獲得しています。さらに特筆すべきは、夜間の対歩行者ブレーキテストにおいて、街灯あり・街灯なしの両条件で完全な満点(55.0/55点)を獲得している点です。日本の生活道路では、街灯の少ない暗い道での歩行者事故が絶えませんが、搭載されているミリ波レーダーと単眼カメラのセンサーは、過酷な暗闇でも歩行者を正確に検知し、安全に停止できることが客観的なデータによって証明されています。
また、日本の狭い駐車場で社会問題となっている「ペダル踏み間違い事故」への対策も万全です。超音波センサーとカメラを用いたペダル踏み間違い時加速抑制装置のテストでは、前進・後退ともに速度変化率の基準をクリアし、満点の評価を得ています。加えて、車線逸脱抑制装置等の試験でも16.0点満点、自動防眩型前照灯などの高機能前照灯装備でも満点を獲得しており、ドライバーのミスを車が積極的にカバーする能力に長けています。
衝突安全性能の面でも、時速55kmでのフルラップ前面衝突試験や側面衝突試験、さらには後面衝突頸部保護性能試験において、ダミー人形への保護性能が最高ランクのLevel 5/5をマークしています。電気自動車(EV)ならではの懸念点である「衝突時の感電リスク」についても、感電保護性能評価で「適合」判定を受けており、衝突後も高電圧システムからの保護が確実に行われることが実証されています。
自動車安全性能2022試験映像:日産 サクラ
出典:ナスバ((独)自動車事故対策機構)
購入前に知っておくべきサクラの「注意点と弱点」
全体として極めて優秀な成績を収めていますが、購入者が理解しておくべき「データが示す限界と弱点」もいくつか存在します。
第一に、対自転車の被害軽減ブレーキ性能におけるシステムの限界です。対車両や対歩行者では満点だった被害軽減ブレーキですが、「対自転車」のテストでは9点満点中6.6点(Level 4/5)にとどまっています。テストデータを詳細に分析すると、交差点での出合い頭を想定したテスト(CBF)の時速30km、45km、60kmという速度域や、遮蔽物から飛び出してくる自転車を想定したテスト(CBNO)の時速50kmにおいて、システムは作動するものの衝突を完全に回避できず、「速度軽減(衝突時の速度が10〜30km/h程度残存する)」にとどまるケースが複数回記録されています。自転車が急に飛び出してくるようなシチュエーションにおいては、システムに頼り切らず、ドライバー自身の目視確認と確実な減速が不可欠です。
第二に、オフセット前面衝突試験における運転席の胸部への負荷です。時速64kmで車両の運転席側の一部を衝突させる過酷なテストにおいて、後席乗員はLevel 5/5(92.2%)と良好な保護性能を示しましたが、運転席はLevel 4/5(84.2%)に留まりました。ダミー人形の計測データによれば、運転席の「胸部変位量(胸の沈み込み量)」が基準値に対してやや大きく、小計スコアが削られています。正面全体でぶつかるフルラップ衝突では問題ありませんでしたが、局所的な激しい衝撃が加わった際は、運転席のドライバーの胸部に一定の負荷がかかる特性があることは留意すべき事実です。
また、車外の歩行者と衝突した際の「歩行者頭部保護性能」もLevel 4/5(3.03/4点)となっており、ボンネット等に頭部が打ち付けられた際の衝撃吸収力は、満点評価には至っていません。
編集長の視点:サクラ
日産サクラの安全性能は、ホンダ・N-BOXやスズキ・スペーシアといった最新の軽ハイトワゴンなど、国内トップクラスのライバル車と比べても、はっきり頭一つ抜けた水準にある。特に予防安全性能の高さは、日産が普通車クラスの「プロパイロット」で培ってきた単眼カメラとミリ波レーダーによる高度なセンサーフュージョンを、軽自動車という厳しいコスト制約の中に、妥協なく落とし込んだ設計思想の賜物だ。また衝突安全性能で最高評価を獲得している背景には、床下の駆動用バッテリーを強固なフレームで囲み、クロスメンバーで補強したEVならではのプラットフォーム構造がある。これが車体全体の曲げ・ねじり剛性を大きく高め、なおかつ圧倒的な低重心化をもたらしたことで、フルラップ前面衝突や側面衝突の際のキャビン変形を最小限に抑え込んでいると見ていい。
一方で、オフセット前面衝突時に運転席の胸部への負荷が指摘されている点は、軽自動車という規格そのものが持つ物理的な限界と、EV化に伴う「重量増」が原因だと考えられる。サクラの車両重量は約1,080kgと、同じ寸法のガソリンエンジン軽自動車に比べて200kg近く重い。質量が増えるということは、衝突時に発生する運動エネルギーもそれだけ大きくなるということだ。フロントノーズが極端に短い軽自動車の、ただでさえ限られたクラッシャブルゾーン(衝撃吸収帯)では、局所的に激しい衝撃が加わるオフセット衝突でエネルギーを前部で吸収しきれず、その分が乗員を拘束するシートベルトを介して、胸部への減速度(G)として跳ね返ってきた、というのがスコア低下の実態だろう。
また、歩行者頭部保護性能が最高評価に届かなかった点や、対自転車の被害軽減ブレーキに限界がある点についても、スモールEVならではのパッケージングの制約が見えてくる。短いボンネットの直下には、モーターやインバーターといった高電圧コンポーネントが密集しており、歩行者と衝突した際にボンネットを沈み込ませて衝撃を吸収するための「クリアランス(空間)」を、物理的に十分確保できなかったと推察される。対自転車の交差点での検知遅れも、センサーの検知画角と演算処理能力という、ハードウェア側の物理的な制約が表れたものと言えるだろう。まとめると、サクラは重量増というEVの宿命ゆえの局所的な課題を残しつつも、強固な骨格と高度なソフトウェアを見事に融合させており、「軽自動車だから」という安全性への言い訳を完全に払拭した、現行のスモールモビリティにおける一つの到達点だと評価できる。
日産 サクラのJNCAP テスト結果データ
日本基準(NASVA / JNCAP)
| 総合評価 | ★★★★★ 92% (184.92 / 199点) |
| 衝突安全性能 | Aランク 88% (88.31点 / 100点) |
| 予防安全性能 | Aランク 97% (88.62点 / 91点) |
| テスト実施年度 | 2022年度 |
※注:本車種は日本国内専用モデルのため、Euro NCAP(欧州)やIIHS(米国)などの海外機関での衝突試験は実施されていません。
※注:評価データおよび考察はNCAP試験当時のものです。安全装備の性能は随時アップデートされるため、最新情報は必ずメーカー公式サイトにてご確認ください。
