【三菱 アウトランダー】客観的データに基づく総合評価
アウトランダーはこんなユーザーにおすすめ
- 【週末の大型スーパーや郊外のショッピングモールを頻繁に利用するユーザー】:日本基準(JNCAP)において、駐車場などで起こりやすい「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」のテストで満点(2.0/2点)を獲得しているため、焦りや疲労からくる誤操作リスクを低減できます。
- 【夜間の生活道路を日常的に走行するユーザー】:米国IIHSのテストにて、暗闇での歩行者検知機能付き自動ブレーキ(Front crash prevention: pedestrian)が、ハイビーム・ロービームともに衝突を回避し「Good(優)」を獲得しているため、見通しの悪い夜道の走行に強い特性があります。
- 【後席に大人の乗員を乗せて長距離移動する機会が少ない、または割り切れるユーザー】:米国IIHSの最新の前面衝突試験(Moderate overlap front)において、後席乗員の腹部へのシートベルトの食い込みや胸部への負荷が指摘されており、後席の安全性能は前席と比べてやや劣るデータが示されています。
各国の厳しいテストからわかるアウトランダーの「強み」
三菱アウトランダーの安全性能データを複数の国際的な評価機関から総合的に分析すると、特に運転席・助手席における基本的な乗員保護性能と、予防安全機能(ADAS)の実効性において高い実力を備えていることがわかります。
まず、日本の交通環境で非常に重要となる予防安全性能について、日本基準(JNCAP)のデータでは「予防安全性能評価」で100%(82.00/82点)の満点を獲得し、最高ランクのA評価を得ています。特に、駐車場などでの事故を防ぐ「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」で前進・後進ともに満点を記録しており、日常的な取り回し時のヒューマンエラーを機械が確実にカバーする設計です。
また、米国基準(IIHS)の評価では、非常に厳しいとされるスモールオーバーラップ衝突(運転席・助手席側の局所的な前面衝突)で最高評価の「Good」を獲得しました。これは電柱や対向車とのオフセット衝突において、頑丈なキャビンが乗員の生存空間をしっかり確保できていることを意味します。さらに、オーストラリア基準(ANCAP)のデータでも、側面衝突や斜めポール衝突テストにおいて、主要な身体部位への保護性能が軒並み満点(GOOD)を記録。加えて、側面衝突時に乗員同士がぶつかるのを防ぐセンターエアバッグが適切に機能し、前席乗員の頭部保護に寄与している点が評価されています。
歩行者や自転車への対応能力も高く、ANCAPの評価では、日中の自転車の飛び出しや交差点での対向車検知(AEB Junction)において、高い速度域でも衝突を回避・軽減する機能が「GOOD」と判定されました。IIHSのテストでも、夜間における横断歩行者や車道沿いを歩く歩行者に対する自動ブレーキが良好に作動しており、日本の狭い市街地や夕暮れ時の運転において、歩行者や自転車を巻き込むリスクを大幅に低減できるシステムが搭載されています。
NASVAによる自動車安全性能2021試験映像:三菱 アウトランダーPHEV
出典:ナスバ((独)自動車事故対策機構)
購入前に知っておくべきアウトランダーの「注意点と弱点」
一方で、各国の過酷なテストによって、購入者が事前に理解しておくべき特有の弱点も明らかになっています。
第一に、後席の乗員保護性能に課題が見られます。米国IIHSの前面衝突テスト(Moderate overlap front)において、後席のダミー人形のラップベルト(腰ベルト)が骨盤の適切な位置から腹部へとずり上がってしまう現象(サブマリン現象の兆候)が確認されました。これにより、腹部負傷のリスクが高まると指摘されており、後席の総合評価は「Marginal(可)」にとどまっています。加えて、ANCAPの前面衝突(MPDB)テストでも、10歳児ダミーの首への負荷が「POOR(不可)」、6歳児ダミーの首への保護が「MARGINAL」と判定されており、チャイルドシート等を使用する年齢層の子供へのダメージが懸念されます。また、同テストでは相手車両に対する攻撃性が指摘され、4.17点のペナルティが課されています。
第二に、3列目シートの安全性に関する注意事項です。ANCAPの資料では、オプションの3列目シートには「トップテザーアンカー(チャイルドシートの上部を固定する金具)が装備されていない」と明記されており、3列目へのチャイルドシートの設置は推奨されないと強い警告が出されています。多人数乗車を目的として購入を検討するファミリー層は、この点を運用でカバーする必要があります。
第三に、特定の条件下での予防安全機能の限界です。ANCAPのテスト結果において、車両後退時の自動ブレーキ(AEB Backover)は歩行者に対して機能したものの、その性能は「POOR」と判定されています。バック駐車時などの安全確認はシステムに依存せず、ドライバーの目視が不可欠です。また、ANCAP特有の評価項目である「車内の子供置き去り検知機能(CPD)」は標準装備されているものの、機関の性能要件を満たしておらず、スコアとしては「0点」と判定されています。さらに、水没時の脱出性能テストでは、ドアの開放は確認されたものの、パワーウィンドウの開閉機能は証明されませんでした。
最後にボディタイプの違いについても注意が必要です。日本基準(JNCAP)では7人乗りのPHEV(プラグインハイブリッド)モデルがテストされていますが、米国IIHSのテストはガソリン車モデルで行われており、「側面衝突(Side: updated test)の良好な結果はPHEVモデルには適用されない」と資料に明記されています。バッテリーを搭載するPHEVとガソリン車では車両重量や剛性バランスが異なるため、評価をそのまま鵜呑みにできない部分がある点に留意してください。
編集長の視点:アウトランダー
三菱アウトランダーの安全性を、同クラスの「トヨタ RAV4」や「スバル フォレスター」といった評価の高いミドルサイズSUV勢と並べてみると、見えてくるのは「前席の乗員保護と予防安全のクラストップレベルぶり」だ。IIHSのスモールオーバーラップ衝突試験での最高評価、そしてJNCAP予防安全性能テストでの満点という結果は伊達ではない。衝突安全ボディ「RISE」の進化と最新プラットフォームの恩恵がそのまま数字に出ている、と言っていいだろう。高張力鋼板を要所に配置し、前席まわりのキャビン剛性を徹底的に高めるという設計思想は、局所的に激しい入力が加わった際にも生存空間を死守する力としてしっかりデータに反映されている。
ただし、後席乗員の保護スコアがいまひとつ伸び悩んでいる点には、この堅牢なボディ構造と車両パッケージングとの間のトレードオフだといえる。IIHSの試験で指摘された後席の「サブマリン現象」の兆候は、前席キャビンの変形を極力抑え込んだ結果、相対的に大きな衝撃エネルギーが後席側へ流れ込んでしまった可能性や、シートベルトの拘束デバイス(プリテンショナーやフォースリミッター)のチューニングが前席に比べてやや後手に回っていることを示唆しているのかもしれない。加えて、PHEVモデルならではの床下バッテリー配置によってフロア位置が高くなり、後席の着座姿勢やシートクッションの沈み込み方が変化したことで、衝突時のダミー人形が不規則な姿勢変化を起こしやすくなった、という要因も無視できないだろう。
さらに、ANCAPでペナルティの対象となった「相手車両への攻撃性」については、SUV特有の高い車高に加え、PHEV化で約2トンに達した車両重量、そして先述の強固なフロント骨格という要素が複合的に絡み合った結果と見るべきだ。強固で重い車体が、衝突相手である小型車により大きなダメージを与えてしまうのは、物理法則からすればある種避けがたい構造上の宿命ではある。とはいえ、テストデータはその現実を明らかにしてしまっている。
総じて言えば、アウトランダーは「前席の乗員を守り抜き、高いセンシング能力で事故そのものを未然に防ぐ」という点において、間違いなくトップティアの実力を備えている。一方で、後席のダメージ指標や3列目シートのアンカー未装備といった部分からは、多人数乗車時に全席で均等な安全性を確保するという観点における、ある種の設計上の割り切りもありそうだ。だからこそユーザーには、自分自身の使い方に照らし合わせたうえで、客観的な判断を下すことが求められるはずだ。
三菱 アウトランダーの主要5大NCAP テスト結果データ
日本基準(NASVA / JNCAP)
| 総合評価 | ★★★★★ 93% (176.77 / 190点) |
| 衝突安全性能 | Aランク 86% (86.77点 / 100点) |
| 予防安全性能 | Aランク 100% (82.00点 / 82点) |
| テスト実施年度 | 2021年度 |
欧州基準(Euro NCAP)
未実施(テスト待ち)
米国基準(IIHS / NHTSA)
| 機関名 | IIHS |
| 総合評価 | N/A |
| スモールオーバーラップ(運転席) | Good |
| スモールオーバーラップ(助手席) | Good |
| 側面衝突 | Good (※PHEVモデルには適用外) |
| テスト実施年度 | 2025年モデル適用 |
オーストラリア基準(ANCAP)
| 総合評価 | ★★★★★ |
| 成人乗員保護 | 85% |
| 小児乗員保護 | 84% |
| テスト実施年度 | 2021年・2025年(2025年4月以降製造モデル適用) |
東南アジア基準(ASEAN NCAP)
未実施(テスト待ち)
※注:評価データおよび考察はNCAP試験当時のものです。安全装備の性能は随時アップデートされるため、最新情報は必ずメーカー公式サイトにてご確認ください。
