【スズキ アルト】客観的データに基づく総合評価

アルトはこんなユーザーにおすすめ

  • 【主に1〜2人で日中の市街地を走行するシニア層】:対車両や昼間の歩行者に対する自動ブレーキ(被害軽減ブレーキ)のテストにおいて、それぞれ満点に近いスコアを記録しています。また、後退時(バック時)のペダル踏み間違い抑制テストでも満点を獲得しており、近所のスーパーへの買い物など、低速での近距離移動をメインとする使い方に最適です。
  • 【後部座席を荷物置きとして割り切り、人を乗せる頻度が少ない方】:時速64km/hでのオフセット前面衝突(車両の片側をぶつけるテスト)において、後席ダミー人形の首(頸部)と胸部への保護スコアが「0点」となっています。後部座席への恒常的な乗車にはリスクが伴うため、単座または前席2座での利用と割り切れる方に適しています。
  • 【夜間の街灯がない暗い道をあまり走らないサンデードライバー】:夜間(街灯なし)の歩行者検知のスコアが昼間に比べて落ちる点や、対向車の幻惑を防ぐ高機能前照灯が「自動防眩型」ではなく「自動切替型(ハイ/ロー切り替えのみ)」に留まっていることから、夜間や視界の悪い環境での運転を避けられるユーザーに向いています。

JNCAPの厳しいテストからわかるアルトの「強み」

日本の独立機関であるJNCAP特有の厳しい予防安全テストにおいて、アルトは市街地での低速走行時における事故回避能力の高さを証明しています。

特に注目すべきは、対車両および昼間の対歩行者に対する被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の優秀さです。対車両のテストでは33点満点中33点を獲得し、昼間の歩行者に対するテストでも25点中22.9点という極めて高いスコアを記録しました。これは、信号や交差点が多く、歩行者の急な飛び出しが発生しやすい日本の生活道路において、ドライバーのブレーキ操作の遅れを強力にカバーしてくれる心強い性能です。

また、日本特有の狭い駐車場での事故を防ぐペダル踏み間違い時加速抑制装置の評価では、バック(後進)時のテストで見事満点(1.0点/1.0点)を獲得しました。コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど、輪留めのある駐車スペースに後退で進入する際、誤ってアクセルを強く踏み込んでしまっても、システムが介入して衝突リスクを的確に低減してくれます。

衝突時の安全性においては、交差点での出合い頭の事故を想定した側面衝突試験(時速55km/h)で大きな強みを発揮しています。軽自動車はその構造上、側面からの衝撃に弱いとされがちですが、アルトの運転席乗員保護性能は12点満点中11.81点(98.5%・最高評価のLevel 5/5)をマークしています。ドア側からの激しい衝撃に対しても、標準装備されているサイドエアバッグおよびサイドカーテンエアバッグが適切に展開し、ドライバーの頭部や胸部、さらには腹部から腰部までを強固に守る設計であることがデータから実証されています。また、後方からの追突を想定した後面衝突頸部保護性能試験においても、運転席・助手席ともに94.8%(Level 5/5)という高いスコアを記録しており、日常的な走行シーンで起こり得る多様な事故形態への備えが確認できます。

自動車安全性能2022試験映像:スズキ アルト

出典:ナスバ((独)自動車事故対策機構)

購入前に知っておくべきアルトの「注意点と弱点」

一方で、限られたコストとサイズの中で設計される軽自動車ならではの明確な弱点も、客観的なデータから浮かび上がっています。購入前に最も理解しておくべきは、後部座席の乗員保護性能に対する懸念です。

対向車との衝突などを模した、車両の運転席側の一部を時速64km/hで障害物に衝突させる「オフセット前面衝突試験」において、後席に座るダミー人形の頸部(首)および胸部へのダメージ評価が「0点」と記録されています。これは、強い衝撃が加わった際、後席乗員の上半身に致命的な負荷がかかる可能性をデータが示唆しています。日常的に家族や子供を後席に乗せて幹線道路を走るような用途には、慎重な検討が必要です。

運転席の保護性能に関しても死角があります。壁に真正面から時速55km/hでぶつかる「フルラップ前面衝突試験」において、運転席ダミー人形の右大腿部(太もも)にかかる荷重の評価が0点、首(頸部)の評価も4点満点中0.92点にとどまっています。衝突時にドライバーの特定部位へのダメージが局所的に大きくなる傾向があり、運転席の総合的な衝突安全性能は66.5%(Level 3/5)と、やや物足りない結果となっています。

予防安全機能の面では、高速道路などで車線を逸脱しそうになった際、警告音や表示(LDWS)は作動するものの、ステアリングを自動で制御して車線内に戻す機能(LDP/LKA)が装備されていません。そのため、長距離ドライブでの物理的な逸脱防止効果は期待できません。加えて、前進時のペダル踏み間違い抑制装置のスコアが後進時に比べてやや低い(0.6点/1.0点)こと、そして万が一の重大事故発生時にコールセンターへ自動で車両位置と状況を通報する「事故自動緊急通報装置」が未装備であることも、最新の安全装備を求めるユーザーにとっては留意すべきマイナス要素となります。後席のシートベルトリマインダー(非着用時警報)の表示が後席から確認できない(0点)という細かい減点も見逃せません。

編集長の視点:アルト

ダイハツ・ミライースという直接のライバル車と比べてみると、現行アルトが持つ予防安全性能は、エントリークラスの軽セダンとしてはかなり優秀な部類に入る。ミライースのステレオカメラ方式「スマートアシストIII」と比較しても、アルトの「デュアルカメラブレーキサポート」は、昼間の対歩行者・対車両検知の精度や、被害軽減ブレーキが作動する範囲において確かな強みを見せている。コスト面での制約が特に厳しい価格帯にもかかわらず、日常の市街地でよく起きる低速域の事故を防ぐ方向にシステムをうまく最適化していることは、テストスコアからも十分に読み取れる。

一方、衝突安全テストにおける強みと弱みは、スズキの設計思想とボディ構造の物理的な特性から見えてくる部分が大きい。側面衝突試験での高評価は、新世代プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」と軽量衝撃吸収ボディ「TECT」による構造的な恩恵だ。車両重量700kg以下という極端な軽量化を追求しながらも、超高張力鋼板を骨格の要所にうまく配置することで、キャビン、特に前席の変形を最小限に抑え込んでいる。限られたコストと重量の枠の中で、最も乗車頻度の高い前席乗員の生存空間確保にリソースを集中させる、という割り切りがここに表れているのだろう。

ただ、オフセット前面衝突試験での後席スコア(0点)や、フルラップ前面衝突での運転席局所ダメージといった弱点は、このパッケージングならではの物理的な制約から来ていると考えられる。全長3395mmという規格の中で居住空間を確保しようとすれば、フロントのクラッシャブルゾーン(衝撃吸収ストローク)がどうしても短くなってしまう。衝突時の大きな入力エネルギーを車体前方だけでは吸収しきれず、キャビン全体に伝わる減速度(G)が高くなりやすいため、より大柄で衝撃吸収構造にコストをかけているホンダ「N-WGN」や日産「デイズ」といったハイトワゴン系と比べると、後席を含めたキャビン全体の衝突安全性能では一歩譲るというのが実情だ。総じてアルトは、「パーソナルな日常の足」としての経済性に振り切ったモデルであり、データが示す通り、前席中心の近距離移動に使ってこそ、その優れた予防安全性能を存分に活かせる一台と言えるだろう。


スズキ アルトのJNCAP テスト結果データ

日本基準(NASVA / JNCAP)

総合評価★★★★☆ 74% (148.57 / 199点)
衝突安全性能Bランク 77%  (77.98点 / 100点)
予防安全性能Bランク 77%  (70.60点 / 91点)
総合評価★★★★☆ 74% (148.57 / 199点)

🔗JNCAP公式評価ページ(詳細ページ)はこちら

※注:本車種は日本国内専用モデルのため、Euro NCAP(欧州)やIIHS(米国)などの海外機関での衝突試験は実施されていません。
※注:評価データおよび考察はNCAP試験当時のものです。安全装備の性能は随時アップデートされるため、最新情報は必ずメーカー公式サイトにてご確認ください。

メーカー公式ページ

https://www.suzuki.co.jp/car/alto