【マツダ CX-80】客観的データに基づく総合評価

マツダ CX-80は、日本(JNCAP)、欧州(Euro NCAP)、豪州(ANCAP)の3つの主要機関すべてにおいて最高評価となる5つ星を獲得しました。日本市場でテストされた右ハンドル(RHD)のPHEVモデルと、欧州でテストされた左ハンドル(LHD)モデルにおいて、衝突安全性能と予防安全性能の両面で極めて高い一貫性が確認されています。3列シートを備える大型SUVというボディサイズを持ちながらも、最新の安全装備が全方位で機能しており、各国の最も厳しい基準をクリアしていることは大きな安心材料です。ただし、欧州モデルには装備されている「車内子供置き去り検知(CPD)」が、豪州仕様では非搭載となっているなど、仕向け地による仕様の差異も報告されているため、購入時には国内仕様の詳細を確認することが推奨されます。

CX-80はこんなユーザーにおすすめ

  • 【ゲリラ豪雨のリスクがある地域や海・川沿いを頻繁に走るユーザー】:欧州および豪州のテストにおいて、万が一の水没時に水圧がかかっても窓やドアが機能して脱出可能であることが客観的に証明されています。
  • 【自転車の飛び出しが多い住宅街や生活道路を日常的に使うユーザー】:日本の対自転車自動ブレーキ試験で高評価を獲得しているほか、降車時に後方からの自転車接近を警告するドアリング防止機能を搭載し、見落とし事故を防いでいます。
  • 【大型車の運転によるペダル操作ミスを懸念しているユーザー】:日本のペダル踏み間違い時加速抑制テストにおいて、対車両だけでなく対歩行者でも確実な動作が確認され、満点評価を得ています。

各国の厳しいテストからわかるCX-80の「強み」

マツダ CX-80の安全性能において特筆すべき強みは、歩行者や自転車といった交通弱者に対する高度な保護性能と、最新の予防安全システムの緻密な連携です。

欧州や日本のテストにおいて、自動緊急ブレーキ(AEB)は昼夜を問わず歩行者や自転車を正確に検知し、衝突を回避または軽減する能力が極めて高いことが実証されています。特に日本のJNCAPでは、見通しの悪い交差点での対向車や、右左折時に横断歩道を渡る歩行者に対する高い検知能力が証明されました。大型SUVは死角が多くなりがちですが、これら最新のセンサー網がドライバーの死角を強力にカバーし、入り組んだ市街地での運転ストレスを大きく軽減してくれます。

さらに、万が一の衝突時に乗員を守る車体構造とエアバッグシステムも世界トップクラスです。側面からの衝突を受けた際、乗員同士が激突するのを防ぐための前席センターエアバッグを標準装備しています。これにより、欧州や豪州の「ファーサイド(遠隔側)衝突試験」において高い保護性能を示しました。また、事故発生時に自動で緊急通報を行う「先進型eCall」や、衝突後に自動でブレーキをかけて多重事故を防ぐ「マルチコリジョンブレーキ」も標準装備されています。

また、豪州(ANCAP)や欧州基準ならではの独自の視点として、水没時の脱出性能が公式に評価されている点も見逃せません。車両が水に浸かった際でも、規定の時間は電気系統が維持され、窓やドアを開けて脱出できることが確認されています。これは、台風や豪雨によるアンダーパスの冠水リスクが高まる昨今の日本の交通環境においても、極めて有益かつ心強い安全マージンとなります。

NASVAによる自動車安全性能2024試験映像:マツダ CX-80

出典:ナスバ((独)自動車事故対策機構)

購入前に知っておくべきCX-80の「注意点と弱点」

全体として極めて優秀なスコアを記録しているものの、各国の精密なテストデータからは、特定の条件下における明確な弱点も浮き彫りになっています。

最大の注意点は、自動二輪車(バイク)に対する自動緊急ブレーキの反応の鈍さです。欧州のテストではバイクに対するシステムの反応が「Marginal(限界的・適正水準以下)」、豪州のテストにおける「交差点右折時の対向バイク試験」では「POOR(不可)」と判定されています。システムが速い速度で接近・すり抜けをしてくるバイクを認識しきれず、衝突を避けられないケースがあることがデータに示されています。

また、衝突時に乗員が受けるダメージの計測値にも一部偏りが見られます。前面衝突試験(壁へのフルラップ正面衝突およびオフセット衝突)において、運転席および後席乗員の胸部への衝撃に対する評価が、最高評価ではなく一段階下の「Adequate(適正水準)」に留まっています。日本の試験データでも、運転席の胸部や左のすね(下脛骨)にかかる負荷が一部確認されており、重大な怪我には直結しないものの、他部位に比べるとダメージを受けやすい傾向があります。

さらに、万が一歩行者と衝突してしまった際の車体側の硬さについても留意が必要です。ボンネット中央部は歩行者への衝撃を柔らかく吸収する設計になっていますが、フロントガラス両脇の硬いピラー(柱)部分やボンネットの最先端部においては、歩行者の頭部に深刻なダメージを与えるリスクが高い(POOR評価)ことが指摘されています。

編集長の視点:CX-80

各国の独立機関が実施した衝突安全テストの結果を眺めていると、マツダ CX-80の記録したスコアには目を引くものがある。この手のテストで長らく安全性の代名詞のように扱われてきたボルボ・XC90や、国内市場でライバルとなるトヨタ・ランドクルーザー250と並べてみても、総合力では決して見劣りしない、むしろ上回っている項目すら少なくないのだ。とりわけファーサイド(遠隔側)の側面衝突試験や、交差点における対歩行者・対車両の自動緊急ブレーキ(AEB)の検知性能では、クラスでも頭一つ抜けた数値を叩き出している。乗員保護と予防安全、この両立を支えているのが、マツダの「ラージ商品群」が共有するFR(後輪駆動)ベースのプラットフォームと縦置きエンジンのパッケージングだろうと見ている。

直6などの大型エンジンを収めるために生まれた長いフロントノーズは、前面衝突の際に強大な運動エネルギーを受け止め、効果的に減衰させるクラッシャブルゾーンとして働く。そこにキャビンをぐるりと囲むマツダ独自の環状骨格構造が組み合わさることで、衝突エネルギーは多方向へ逃がされ、乗員空間の変形は最小限に抑え込まれる。側面衝突試験で前席センターエアバッグとの相乗効果によって高い評価を得たことや、水没時にもドアの開閉機能が確保されていたという事実は、車体そのものの構造的な剛性の高さと、電気系統の保護設計がしっかりしていることの何よりの証拠だ。

もっとも、この頑丈な骨格には裏の面もある。前面衝突試験で乗員の胸部にかかる負荷が一段階下の「Adequate」評価に留まったこと、そして歩行者衝突時にAピラー(フロントガラス両脇の柱)周辺が高い加害性を示し「POOR」評価となったこと。これらは、堅牢な骨格構造ゆえのトレードオフと読むのが妥当だろう。2トンを超える車重と縦置きパワートレインを支え、乗員空間の潰れを断固として防ぐために、ピラーやフロント構造の剛性を極限まで高めた結果、衝突時の減速度のピークが短時間でシートベルトなどの拘束装置に伝わりやすくなる。同時に車外の歩行者にとっては、衝撃を吸収しきれない「硬い壁」として立ちはだかってしまう。この二つの評価は、まさにその副作用が計測データとして表れたものと言える。

もう一点気になるのが、自動二輪車に対する自動緊急ブレーキの反応が鈍いという結果だ。これも大型SUV特有のパッケージングとセンサーチューニングの性質が絡んでいると考えられる。高いノーズと広い車幅を持つCX-80のセンサー網は、投影面積の大きい四輪車や、動きが比較的読みやすい歩行者の検知には強い。ところが前面投影面積が極端に小さく、すり抜けのような素早い軌道変化を見せる二輪車に対しては、カメラとレーダーの統合アルゴリズムが「これは衝突の脅威だ」と判断を確定するまでに、わずかなタイムラグが生じてしまう。データはそれを物語っている。強固なボディによる物理的な安全性の追求は確かに徹底しているが、複雑化する一方の交通環境の中で、二輪車のような速く小さなターゲットへの検知ソフトウェアの最適化は、CX-80だけでなく大型SUV全体が今後向き合うべき技術的な課題であることを、このテスト結果は静かに示唆している。


マツダ CX-80の主要5大NCAP テスト結果データ

日本基準(NASVA / JNCAP)

総合評価★★★★★ 94% (183.00 / 193.8点)
衝突安全性能Aランク 92%  (92.01点 / 100点)
予防安全性能Aランク 96%  (82.99点 / 85.8点)
テスト実施年度2024年度

🔗JNCAP公式評価ページ(詳細ページ)はこちら

欧州基準(Euro NCAP)

総合評価★★★★★
成人乗員保護92%
小児乗員保護88%
歩行者保護84%
安全補助装置79%
テスト実施年度2024年

🔗Euro NCAP公式評価ページ(詳細ページ)はこちら

米国基準(IIHS / NHTSA)

未導入(テスト対象外)

オーストラリア基準(ANCAP)

総合評価★★★★★
成人乗員保護92%
小児乗員保護87%
交通弱者保護84%
安全補助装置83%
テスト実施年度2024年(基準: 2023-2025)

🔗Euro NCAP公式評価ページ(詳細ページ)はこちら

東南アジア基準(ASEAN NCAP)

未実施(テスト待ち)

※注:評価データおよび考察はNCAP試験当時のものです。安全装備の性能は随時アップデートされるため、最新情報は必ずメーカー公式サイトにてご確認ください。

メーカー公式ページ

https://www.mazda.co.jp/cars/passenger/cx-80