【ホンダ ヴェゼル】客観的データに基づく総合評価

ホンダ ヴェゼル(海外名:HR-V)は、日本のJNCAP、欧州のEuro NCAP、豪州のANCAP、そして東南アジアのASEAN NCAPなど、世界の主要な安全テストにおいて総じて高い評価を獲得しているグローバルSUVです。各国で最高ランクの5つ星(またはそれに準ずる高評価)を達成しており、衝突安全性能と予防安全性能の両面において高い基準を満たしていることが実証されています。

ヴェゼルはこんなユーザーにおすすめ

  • 【毎日の通勤や買い物で狭い市街地を走るユーザー】:JNCAPのペダル踏み間違い時加速抑制装置テストで満点を獲得、さらにASEAN NCAPでも低速域のAEB(衝突被害軽減ブレーキ)が高い評価を受けており、日常のうっかりミスや急な歩行者への対応力が優れています。
  • 【週末に家族や友人を乗せて高速道路を利用するユーザー】:Euro NCAPやANCAPにおける高度な車線維持支援(LKA/ELK)や、Car-to-Car(対車両)の衝突回避支援システムが満点に近いスコアを記録。長距離ドライブ時の疲労軽減と事故リスクの低減に大きく貢献します。
  • 【夜間の運転が多い、または子供の送迎を行うユーザー】:JNCAPの夜間歩行者検知テスト(対歩行者:街灯なし)において、高い速度域からの衝突回避能力が証明されています。暗い道での急な飛び出しに対しても、単眼カメラベースのシステムが確実な安全を提供します。

各国の厳しいテストからわかるヴェゼルの「強み」

ヴェゼルの最大の強みは、高精度な予防安全システム(ADAS)と、頑強なボディ構造による乗員保護性能のバランスの良さにあります。

予防安全の面では、ホンダの安全運転支援システムが各国のテストで極めて優秀な成績を収めています。ANCAPのテストでは、対車両のAEB(自動緊急ブレーキ)が交差点での右折時(対向車や歩行者との衝突回避)を含めて「GOOD(良好)」の最高評価を獲得。これは、見通しの悪い交差点が多い日本の道路環境において非常に心強い機能です。さらに、JNCAPでは夜間の歩行者(街灯なし)に対する被害軽減ブレーキテストでほぼ満点を記録しており、単眼カメラの優れた暗所認識能力が実証されています。

衝突安全の面でも、側面衝突やポール側方衝突といった過酷なテストにおいて、Euro NCAPおよびANCAPの両方で乗員の全重要部位に対して「GOOD」または「ADEQUATE(適切)」という高い保護性能を示しています。また、ASEAN NCAPでは、東南アジア特有の交通事情を反映した「二輪車の巻き込み検知機能(ブラインドスポットインフォメーション)」や、子供の置き去り検知機能(CPD)といった独自の安全装備も高く評価されています(※一部機能は仕向け地により仕様が異なります)。

自動車安全性能2021試験映像:ホンダ ヴェゼル

出典:ナスバ((独)自動車事故対策機構)

購入前に知っておくべきヴェゼルの「注意点と弱点」

全体として極めて安全性の高いヴェゼルですが、各国のテストデータからはいくつかの注意点も浮かび上がっています。

第一に、後席乗員の胸部保護についてです。Euro NCAPの前面衝突(フルラップ)テストにおいて、後席に座るダミー人形の胸部への負荷が「Marginal(ボーダーライン/やや不十分)」と評価されています。ANCAPでも同様の傾向が見られており、後席に高齢者などを乗せる機会が多い場合は、正しいシートベルトの装着を徹底するなどの注意が必要です。

第二に、側面衝突時のファーサイド(反対側)からの衝撃に対する保護です。Euro NCAPとANCAPの評価において、運転席と助手席の乗員同士が衝突するのを防ぐ「センターエアバッグ」が未装備であるため、ファーサイド衝撃テストのスコアが伸び悩んでいます(ANCAPでは4点中0.96点)。

第三に、対歩行者の衝撃吸収性能です。ボンネット中央部やバンパーは良好なスコアを出していますが、Euro NCAPやANCAPのデータによると、フロントガラスの支柱(Aピラー)の付け根付近やボンネットの前縁(骨盤周り)において、歩行者へのダメージリスクが高い「Poor(劣る)」評価の領域が存在します。万が一歩行者と接触した際、特定の部位へのダメージが大きくなる可能性があることは認識しておくべき事実です。

また、日本国内モデル(JNCAPテスト車)は1.5Lの「e:HEV Z」などハイブリッド仕様が中心ですが、海外(ASEAN NCAP等)ではガソリンモデル(タイ工場生産など)もテストされています。基本的なボディ骨格は共通しているものの、搭載されるエアバッグの数(カーテンエアバッグの標準化の有無など)やブラインドスポットモニターの設定が国やグレードによって異なる点には留意してください。

編集長の視点:ヴェゼル

同じグローバルSUV市場という括りで見ると、ヴェゼルの安全性能は間違いなくトップクラスの基準を満たしているが、ライバル車と比較してみると、各メーカーのアプローチの違いがくっきり見えてくる。たとえばトヨタ「ヤリスクロス」は、厳格化していく欧州のテストプロトコルを見据えてセンターエアバッグを早くから採用し、ファーサイド衝突(反対側からの衝撃)のスコアで先行している。またマツダ「CX-30」は、強固な環状構造による高いボディ剛性を武器に、物理的な成人乗員保護性能で歴史的な高評価を記録した。これらに対してヴェゼルは、ホンダ独自の効率的なパッケージングと先進安全装備(ADAS)を掛け合わせ、独自のバランスでスコアを組み立てているのが特徴だ。

各国のテスト結果に表れたヴェゼルの強みと弱みは、ホンダの代名詞とも言える「センタータンクレイアウト」を採用した設計思想に由来していると考えられる。限られた全長の中でクラストップレベルのキャビンスペースを確保するため、ヴェゼルのフロントノーズ(クラッシャブルゾーン)は相対的に短めに作られている。この限られた空間で衝突エネルギーを効率よく分散・吸収する独自の骨格構造が、良好な乗員保護性能の土台になっている。加えて、高精度な単眼カメラを用いたシステムによって、都市部や交差点といった日常的なリスクの「事前回避」に開発リソースを重点的に配分していることが、世界各国の予防安全テストでの高得点にそのままつながっている。

一方で、データに表れたいくつかの懸念点は、この優れたパッケージングが抱える物理的なトレードオフの表れと読み解ける。フルラップ前面衝突で後席乗員の胸部負荷がやや高めなのは、短いノーズで受け止めた強大な衝撃をキャビン全体で受け止める構造上、高い減速度(G)が後席のシートベルト拘束力として局所的に出やすいためだろう。また、歩行者保護テストでAピラーの付け根付近のスコアが伸び悩んでいる点についても、SUVらしい厚みのあるフロントフェイスと、広い前方視界を確保するためのピラー配置が、歩行者との二次衝突時の衝撃吸収という点で不利に働いている可能性が高い。

客観的なテストデータから総括すると、ヴェゼルの安全性能は「居住空間の最大化」と「日常域での事故の未然防止」を最優先にした設計思想の結晶だと言える。センターエアバッグがまだない点など、年々厳しくなる最新の衝突テストプロトコルに対して、ハードウェア側のアップデートの余地はまだ残っているものの、実際の交通環境で発生頻度が高い交差点での接触や、夜間の対歩行者事故に対する回避能力はかなり秀逸だ。特定の衝突要件だけに特化するのではなく、ユーザーの日常的な実用性とリアルワールドでの安全性を高いレベルで両立させた、合理的で信頼できる一台だと評価できる。

ホンダ ヴェゼルの主要5大NCAP テスト結果データ

日本基準(NASVA / JNCAP)

総合評価★★★★★ 93% (177.04 / 190点)
衝突安全性能Aランク 89%  (89.92点 / 100点)
予防安全性能Aランク 96%  (79.12点 / 82点)
テスト実施年度2021年度

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欧州基準(Euro NCAP)

総合評価★★★★☆
成人乗員保護82%
小児乗員保護75%
歩行者保護72%
安全補助装置78%
テスト実施年度2022年

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米国基準(IIHS / NHTSA)

未導入(テスト対象外)

オーストラリア基準(ANCAP)

総合評価★★★★☆
成人乗員保護82%
小児乗員保護77%
歩行者(VRU)保護72%
安全補助装置69%
テスト実施年度2022年

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東南アジア基準(ASEAN NCAP)

総合評価★★★★★(81.38点)
成人乗員保護35.00点(加重スコア)
小児乗員保護17.81点(加重スコア)
二輪車安全性(Motorcyclist Safety)10.00点(加重スコア)
テスト実施年度2022年

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※注:評価データおよび考察はNCAP試験当時のものです。安全装備の性能は随時アップデートされるため、最新情報は必ずメーカー公式サイトにてご確認ください。

メーカー公式ページ

https://www.honda.co.jp/VEZEL